SINLOG

シンガポール在住の底辺現地採用のブログ。 雑感、旅行記、日々の生活など気ままに書き綴ります。

リー・クアンユー初代首相の国葬当日 - もらい泣きと新たな確信。

シンガポールの歴史上最も悲しい日と言っても過言ではないかもしれない。

2015年3月29日、リー・クアンユー初代首相の国葬の日。

友達と行くような行事でもないだろう。

記帳した後、一人で国会議事堂へ向かう。


(朝10時ごろの様子)

雲行きが徐々に怪しくなってきて、まさにシンガポール国民の気持ちを象徴するかのような雨が降り出してくる。

自分は傘は持たない主義だ。

この日も傘を持ってきていなかったので建物の下に避難して待っていた。

が、このままではお見送りする、リー初代首相が全く見えないので、雨に濡れながら前線へ割り込んだ。

見ての通り傘がないと、いる事ができないような状況。

ずぶ濡れになりながら呆然と待っていると、自分の隣にたっていた小柄の、40代後半ぐらいと思しき女性が傘の中に入れてくれた。

にっこりと笑って「傘の中に入りますか?」と尋ねてくれた。

優しさに満ち溢れた雰囲気の人だ。

嬉しかった。

お言葉に甘えて入れてもらう代わりに、女性が極力濡れないように傘を持った。

12時が過ぎた頃に学生たちが前に並ぶ。

今か今かと待ち続ける国民たち。

そろそろいつ来られても、おかしくない時間になった時に、信じられない事が起こった。

リー初代首相のお姿が、後ろの人にもよく見えるようにと、一人の男性がみんなに傘を下ろすよう呼びかけたのだ。

この土砂降りにも関わらず、傘を下ろす国民たち。両手を体の前に合せ、きちんとした姿勢で佇む姿が印象的だった。

自分は一番後ろに立っていたこともあり、傘に入れてくれた女性を前に立たせ、女性が雨に濡れないよう傘をさしていた。

出発の合図が鳴りしばらくすると、国民は傘を国旗に持ち替える。

一瞬だった・・・

この車に繋がれている荷台のリー初代首相の棺が目の前を通り過ぎた。

その瞬間、周りの空気がどっと変わる。

悲しみの声をあげる人たちと、周りを元気づけようと声を上げる人たち。

 

あまりに一瞬の出来事で自分は、何とも言えない空虚感に襲われていた。

 

が、自分の前でお見送りされていた女性を見て我にかえる。

女性は傘の中で目を赤くしながら、おろおろと泣いていた。その様子を見て思わず自分も目頭が熱くなってしまった。

この女性を含む彼らの現在の豊かな生活。

当時資源も何もなかったシンガポールをアジアで別格なほど裕福な国に一代で、一から築き上げたのがリー初代首相だ。

そのリー初代首相とのお別れなのだから、悲しくない訳がないだろう。

「本当に感謝しているんだろうな」

女性の気持ちが痛い程伝わってきた。

規律に厳しい明るい北朝鮮なんて揶揄されるシンガポールだけど、リー初代首相は今までの歴史上の独裁者たちとは明らかに違う。

国民や滞在者にも厳しい分、それ以上自分にも厳しかったリー元首相。

彼に「汚職」なんていう文字は、これぽっちもなかった。

シンガポールの税金は驚くほど安い。

にも関わらず、クオリティの高いシンガポールのサービスには、今まで驚かされるばかりだった。

これほどモラルが高く頭が切れる、優秀な政治家、国のリーダーは、自分が生きている人生の中では、もう二度と現れないかもしれない。

だけど、リー首相を見送った後、お互い元気づけようとする国民達を見て、皆の心が一つになったような気がした。

リー・シェンロン現首相とシンガポール国民たちに、リー・クアンユー初代首相の意思は間違いなく受け継がれている。

リー・クアンユー首相がいなくなっても、この国は絶対に大丈夫だろうと確信した

リー・クアンユー初代首相の意志が、リー・シェンロン現首相と、シンガポール国民に受け継がれている限り、シンガポールは常にアジアの中で、「別格で特別な国」であり続けるだろう。

正直、当日は雨にずぶ濡れになって、この後本当に大変だったけど、「参列に行ってよかった!」と心から思わされた国葬でした。