店内で空気を察知した後、ある店員さんに大切な事を気付かされた。
(こちらの続き)
他の店では再現できない空気
食事中に視線を感じた先に目をやると、客用ソファーに座っている若い男性店員が頭をキョロキョロ動かしたあと、こちらをギラりと見つめた。
一瞬ギョッとしたが、いわゆる「公教育では特別に支援が必要とされるような方」という事は、様子を見てすぐに分かった。なるほど、これは興味深い。少し観察してみる事にした。
自分が見た限りでは、彼の主な仕事は二つ。入ってきたお客さんを席に案内すること。空いた食器をさげること。テキパキとこなしているように見えた。
周りとの関係も良好に見える。料理人のおじさん、山登りの格好のおばちゃん店員さんと相まって、他店では到底まねできないような、ほわんとした空気を作り上げていた。そしてみんな笑顔が絶えない!
俗に言う3K(きつい、きたない、きけん)と言われる飲食業なのに、何故このような事が可能なのか?もう少し観察してある事に気づいた。
ほんわかした雰囲気をつくる秘訣
男性定員は、基本的に客用ソファーに座っている。必要がある時だけ、皿を下げに来たり、入店客を案内するため動いていた。
日本の飲食店であれは「ゴルァアアー、なにお客様用ソファーでくつろいどんじゃアホォォー、仕事なめとんがぁーヽ(` Д ´ )ノ」と言われるところだろう。だが、山登りおばちゃん店員も、料理人おじさんも全く指摘しない。
かと言って、その男性店員が怠け者なのかと言うと、そうではない。むしろ動く必要がある時は、直ぐに行動している働き者にも見える。
彼の仕事ぶりは「力を入れる所は力を入れ、抜くとこはとことん抜く」というシンガポールの仕事のスタイルをそのまま体現しているように思えたのだ。
普段は座っているから、肉体的負担も掛からない。座ってる事について指摘もされないから、精神的負担もかからない。体力を消耗する必要のない時に、できるだけチャージして、動く時に動く。3Kの飲食業でも、こうする事で余裕が生まれるのだと実感させられた。
健常者に比べて若干ディスアドバンテージがあるにも関わらず、無駄のない動きをする。そんな彼の賢さもさる事ながら、彼が座っている事について指摘しない、山登りのおばちゃん店員と料理人のおじさんのマネージメントにも驚かされた。この店は客にとって居心地が良い空間だったのだ。
実際このあと、若い金髪のアンモー(欧米人)客が現れたが、この男性店員に案内されると、アンモー男性もニッコリしていた。欧米人は、サービスレベル要求度が高いにも関わらず(個人差はあるけど)。
シンガポールと香港の明らかな違い
自身は仕事の関係でたまに香港人とコミュニケーションをとる機会がある。いつもいつも香港人について思うのことがある。「きゃつらは仕事中、何故そこまでヒステリックなのか?」ということ。
シンガポールと香港。ご存知のように両国とも英語が使われているタックスヘイブンで近年経済成長が目まぐるしい。経済レベルは「同等である」と自信をもって言える。
なのに、何故「No worry, okay lah…」と言いながらマイペースで仕事をしているシンガポール人の国と、がむしゃらにストレスを抱えながら仕事をしている香港人の国の、経済レベルが同じなんだ?
その答えを、頭キョロキョロ男性店員が教えてくれているように思えた。
「格好なんて気にせんでええ。力を抜くところはとことん力抜いて、必要な事にアクセントをおいて仕事をしたら、それでOKや。それでみんなハッピーになれる。」
彼が、シングリッシュや関西弁で上のように語りかけてきたわけではないけど、彼の行動が、このような事を自分に語り掛けてきているように感じた。
居心地が良くて長居した
本日のスープ、パスタ、コーヒーのセットを完食したら、お腹が一杯になった。
しかし、余りにも居心地が良かったので、タイガービールを追加注文して長居してしまった。
ゆっくりビールを飲み干しお会計。スープ、パスタ、コーヒー、タイガービール。締めSGD21.75。すごく良心的で安い。
代金支払いの際に、山登りおばちゃんに、営業時間を聞いてみた。月〜土、午前11時〜午後10時まで。日曜日も電話をかけてアポをとってくれたら、対応できるかもしれないとのこと。やはり精神的に余裕のあるほんわか店は違うな。こんな店がシンガポールのエリート養成校のNUSにあることも素晴らしい。
SAPORE ITALIANO
NUS University Town, 1 Create Way,
#01-06 (UTown), Dover, 138602
TEL︰ 6684-5137
NUSのど真ん中にあるのでシティエリアから非常に遠いですが、オススメ店です。シンガポール在住で時間がある方は是非どうぞ。