自分が帰国後に最も驚いたのは、昨今話題の「推し文化」です。
従来からある「宗教」「オタク」をポジティブに言い換え、若者を中心に市民権を得た「推し」という現象。
なぜ日本国内では「推し」を持つ若者だらけになったのか?
今回は、この「推し」をテーマにして、雑感を書いていきます。
「推し」とは
「推し」とは、熱狂的に応援したいアイドル、俳優、アーティスト、キャラクターなどを指す単語です。
特に10~20代の若者の間では、この「推し」が浸透していて、大半が「推し」という単語を知っているのみでなく、人間たるもの推しが居て当たり前的な同調圧力「推し文化」まで形成されてます。
特に「推しの子」というアニメは、現在は社会現象となっているほど有名です。
自分は、このようなアニメが社会現象になるほど有名になる現在の日本社会が異常だと感じています。
「推し」の多様化・過激化
自分はマーケティング目的で、よくTiktokやInstagram等を徘徊してるのですが、日々「推し」の度合いが過激化・多様化しているように感じます。
「推し」を従来の「オタク」と捉えるならジャニーズオタク(ジャニオタ)をイメージすると分かりやすいです。
ジャニーズといえば一昔前はSMAP、TOKIO、KAT-TUNなどが有名でしたが、昨今はKing & Prince(キンプリ)、SixTONES、Snow Man、なにわ男子などが有名です。
対象がジャニーズのオタク(ジャニオタ)なら、何れも応援する(推す)対象はアイドルグループやアイドルメンバーである生身の人間ですよね。
しかし昨今はStrawberry Prince(すとぷり)というグループも人気で、推す対象が半二次元にも広がってきています。
すとぷり Official Web Site2.5次元アイドル史上初!紅白出場!5大ドームツアー制覇!動画配信サイトを中心に様々な活動を行う6人組ユニット「すとぷり」の公式サイト&公式ファンクラブサイト"すとふぁみ"!STPR所属のエンタメ系歌い手グループ
一見ただのアニメキャラに見える彼らですが、実は中身の人間も居て歌も唄える高校生アイドルグループです。
※ちなみに自分の友達(ジャニオタ)は当然「キンプリ」は知っていましたが「すとぷり」は存在も知らなかったようです。
そして最近では、生身の人間のみならず完全な二次元キャラまで推す人まで出現。
アニメキャラの為に、グッズ・ケーキなどを用意して生誕祭をしている人も居ます。
アニメ『進撃の巨人』リヴァイの生誕祭
アニメ『HUNTER×HUNTER』キルアの生誕祭
一昔前にも二次元好きなオタクは居ましたが、主にメイド喫茶で楽しんでいるような美少女アニメ好きな男性というイメージでした。
楽しみ方も自宅で人目につかないようコソコソ楽しむか、メイド喫茶に行くかでした。
しかし昨今では、カフェで盛大に推し活(本人不在の誕生祭など)を行い動画撮影&Tiktokにアップする、という女性も増えてきています。
このような推し活オタクは「神」「布教」「信者」「聖地巡礼」という単語を良く使い、その様は宗教信者そのもの。
「推し活にお金は惜しむな」と言う人もいるくらいで、推し活をする人たちが高年収の社会人なら自分の収入で趣味を楽しんでいるだけですが、もし未成年の子供が親のお金で推し活しているとしたら…以下略。
社会的意義のない芸能ビジネス
昨今の推しブームで経済が活発化して良いという意見を時折見かけますが、自分はその意見に否定的です。
自分は「推し」現象が起こる前から、基本的に芸能ビジネスなるものに否定的でした。
なぜなら子供のころからバラエティー番組を見ていると、いつも母親に次のように言われ育ったからです。
こんな低能なバラエティ番組、見るの辞めなさい。芸能人がなぜ”芸能人”と呼ばれているか知ってる?芸しか脳がないから”芸脳人”と言うのよ
そう吐き捨てながら母親は芸能人が出演している大河ドラマにチャンネル切り替えてたので矛盾してたんですが、この経験は自分をアンチ芸能人に育て上げるのに十分でした(今では感謝してます)。
それに、よくよく考えると、社会的貢献を度外視して知名度があるだけでお金が集まる、という構造も不公平です。
お金は金融緩和で増やす事は出来るけど、短期的には有限です。
そんな限られたお金=富の源泉は、本当に必要な仕事をしているエッセンシャルワーカーにもっと割り当てられるべきで、メディアや芸能に割り当てられる比重が大きすぎです。
この世の中、生命保険・ゲーム・SNS・メディアなど稼げる業種ほど無くても誰もこまらない(=社会的意義の低い)サービスで、上記青枠のような無いと沢山の人が困る(社会的意義の高い)業種ほど従事者の給与が低く設定されてます。
一見社会的意義の無さそうなブランド業界は、購入者が大金持ちである場合も少なくなく、そういった場合は富の再分配機能を果たし、一定の社会的意義はあります。
一方で芸能業界は、無くても誰も困らない最たる業種な上に、集まる資金が膨大なので表向きは公共放送なNHKも忖度していた男性アイドル事務所「ジャニーズ」は有名ですよね。
そして昨今社会現象にもなっている「推し文化」は芸能ビジネスの拡声器のようなもの、と自分は思っています。
Tiktok×推し中毒になる中高生
むかしは芸能人や有名人は、芸能事務所経由でテレビ等に出演するマイノリティ人種でした。
しかしながらYoutuberや「いつでも会えるアイドル」として有名になったAKBが台頭してきたことで、少し頑張れば誰でも有名人になれる・会える世の中になりました。
芸能事務所や公権力に忖度しなくてもYoutubeで頑張れば誰でも有名になれる。
そうやって自身の力でのし上がったYoutuber達には好感が持てますし、芸能人(芸能事務所会社員)よりは凄い存在だと思います。
ただ昨今中高生を中心にTiktokが急速に流行りだし、有名中高生Tiktokkerが増殖。これまでには無かった奇妙なオタク文化の大衆化「推し文化」が形成されていると感じます。
サイバーエージェントが運営するAbemaTVも、その動きを助長しています。
AbemaTVの「今日好き」にて中高生有名人(推し)が増殖しており、成長段階の多くの子供に影響を与えていると感じます。
「今日好き」に登場する中高生は大半がTiktokアカウントを所有しています。
ファン中高生からすると彼らのショート動画にコメントすれば「本人から返事が来るかも」という期待感を与えますし、今日好き中高生Tiktokkerがファンのコメントに返すことは珍しくないです。
その事実が、更に学歴の中高生に対しTiktok×推し中毒になるモチベーションを与え続けていると感じます。
推し中毒がもたらす弊害
応援している人物がいるのは悪い事ではないですし、それ自体は昔から芸能ビジネスが助長していました。
自分にもジャニオタの友人がいますが、彼女らの人格に問題があるとは思いませんし「推し」が居ることで次のような効果も期待できます。
しかし、そういったオタクはあくまで少数派でした。
ところが現在はTiktokを通じて推し文化が蔓延、日本中の中高生が「推しがいて当たり前」的な同調圧力をかけられていると感じます。
中高生がTiktok×推し中毒になる事で以下のような弊害が考えられます。
精神的に未熟な中高生をターゲットに、上記のようなリスクを孕む推し文化が蔓延する社会は異常です。
実際に推し活費用を稼ぐため娼婦として働く若者も増えています。
若い女性の間では、ジャニーズやアニメ系の“推し活”(贔屓のライブに行ったりグッズを買って応援すること)が流行っていて、その資金を稼ぐために派遣OLなどが多く立っています。
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先に挙げたAbemaTVの「今日好き」は、中高生を中心とした恋愛バラエティなのでターゲットも中高生です。
番組内では外見の良い中高生カップルが次々と誕生し、多くの中高生の憧れの対象となり、中には結婚したカップルも居ます。
「今日好き」等の番組を通して、或いはTiktok内で自力で有名になり皆の憧れの対象となった中高生は、自己肯定感が爆上がりします。将来の仕事にも繋がる可能性もあり、最高の人生が歩めるかもしれません。
しかし、一方で彼らを応援するその他大勢はどうでしょうか。
「今日好き」カップルは、容姿端麗で素敵な人たちばかり。それに比べて私は…。私は、将来結婚できるのかな。
TiktokやAbemaTVが中高生に狙いを定め助長する異常なまでのルッキズム主義。
容姿は努力次第で改善することができますが遺伝による部分も多く、学生という立場では化粧・整形なども限界があります。
その結果、この吹き出しの例の女子高生のように悩む学生も少なくないのではないか、と思います。
誰もが自分自身を「推す」べき
常に宗教的に応援すべき人物がいるような「推し文化」は、「常に姿形を変え若者を信者化する同時多発統一教会」と何ら変わりありません。
親族・恋人・友人でもない応援すべき人を持つべきみたいな風潮は、自分自身を蔑ろにする事に近いと感じます。
自分も中高生時代は好きな歌・好きな歌手くらいは居ましたが、単純にその人の歌が好きなだけで「推し」ではありませんでした。
これまで一度もズレたことない自分の信念。それは「自分の推しは常に自分」です。
俺の推しは常に俺!
自分は元底辺現採で今は無職だけど、自己肯定感は常時MAXなので有名人やブランドには興味ない。
どんな有名人より自分の方が価値があふるし、この355円の財布も自分が使ってるからVuittonの財布よりも尊い。#私の推しは常に私#俺の推しは常に俺
↑ 使って下さい。 pic.twitter.com/ec3n46wtH8
— Xin(しん) (@xinzaixinjiapo) September 25, 2023
自分が誰かを応援したり金銭的サポートする事があれば、それは友人・家族などの親しい間柄の人です。
自分の人生の主役は、自分自身。あなたの人生の主役も、あなた自身です。
多くの学齢期の中高生も知名度だけある他人ではなく自分自身を推すべきです。
盲目的に赤の他人を推しまくるべき価値の低い人間は、この世には存在しません。