カレッジを後にして来た道を戻り、適当に走って適当なカフェにやってきた。
もう観光は良いから話をしようという事でやってきたカフェ。ここでトランからベトナム人の国民性や特徴など様々なことを教えてもらった。
ここより物価の高い大都市ホーチミンでも、大卒の給料は月収USD300.00がいいところ。トランも高校教師で他の人よりは貰っていると言っていたが、給料はこの範囲らしい。
ベトナムで人気があるスマホはノキアらしい。理由は他のメーカーのスマホと比べて安いから。逆に言うとアイフォンやサムスンの最新のものは、高すぎて手が出せないのだとか。
スマホどころか、ダラットのほとんどの人が愛用している携帯は何世代も前のものだ。アイフォン4Sを使っているトラン曰く、何世代も前の携帯は電池が非常に長持ちするので、ローカルには重宝されているらしい。
ダラットのショッピングモールでも、スマホが売られていたが中国のパクリ製品しか置いていなかった。おまけに、どれもこれもUSD300.00ぐらいと偽物にしては高い。
スマホについてはあくまで一例だけど、ダラットでは何もかもが中途半端だ。「ここに住んでいる人は、みんな幸せなのだろうか?」そう思わざるを得なかった。しかし驚くべきことに、ここではみんなが幸せそうな顔をしていたのだ。その理由について、トランはこう説明する。
「ベトナムの人々は自分の生活に直接関わらない情報はあまり気にしない陽気な国民。新聞やニュースで情報をキャッチしても、本当にダイレクトに自分に関わってくること以外のことは考えない。物、情報、サービスがありふれ過ぎているからストレスが増えるんだ思う。そういったことを気にしないベトナム人は、世界の生活の満足度のランキングでも毎年上位に位置しているの。」
街の見た目は美しいしストレスフリーだけど、サービスについては日本人の感覚だといまいちだと言わざるをない部分が目立った。たとえば、自分がレストランで頼んだドリンクに変な小さい蟻のような昆虫が紛れていたり、素敵なレストランだなと思って店に入ったところ、全然忙しそうではないのに、全くテーブルが片付けられていなかったりした。
そこから学んだことは「サービスレベルと労働者のストレスは比例する」ということ。ダラットの人々は表情がやわらかく非常にリラックスしている感じだ。仕事も、例えばレストランでは、飲物と食事をサーブするという最低限のことをしていればいい。最低限さえやれば上司に怒られることもないしマイペースで働ける。ストレスフリーだ。
もし、この都市の人々が自分たちの都市をシンガポールのように発展させたいのなら、外国人を誘致するために、ストレスという副産物とともに、これらのサービスの質を向上させる必要があるだろう。
改めて、そんなダラットに長居したいかトランに尋ねると「たまに旅行に来るのはいいけど、ずっとはいたくない」という返事が返ってきた。ダラットから他の都市へ出ていった人がダラットに戻ってくる例も、非常に稀なんだとか。
観光地としては悪くない、でもずっといるのは嫌だ。自分にとっての日本のようだと思った。毎年30000人が自殺する日本。サービスレベルと労働者のストレスそれらのバランスが悪いと他の世界の味をしめた人間は出ていく。
ダラットと日本は特徴としては全く正反対だが、両方ともサービスレベルと労働者のストレスがアンバランスである点においては同じだと思う。そして、どちらの方が幸せと言えるのか、その答えは自分には分からない。