どうも、シンガポール在住、底辺現地採用のXin(しん)です。
シンガポールでは、毎年1月下旬~2月上旬の旧新年(Chinese New Year)の時期になると、日本の新年のごとく家族で食事したり、お年玉を渡したりして、盛大に新年を祝います。
日本で新年に食べる御節のように、東南アジア華僑によって食される代表的な料理として、鱼生(Yusheng/ユーシェン)があります。
※鱼は簡体字なので、魚生と書いても問題ないです。
この魚生を食べることを捞起(Lohei/ローヘイ)とも呼びますが、日本語媒体・SNSでは、この時期、ほぼ100%ローヘイのオンパレードになります。
この鱼生(Yusheng/ユーシェン)と捞起(Lohei/ローヘイ)には、明確な違いがあるのですが、違和感ある使い方をしている媒体を散見します。
そこで今回は、両者の違い・起源と、ローヘイ独り歩きの理由などを簡単に紹介します。
鱼生(ユーシェン)と捞起(ローヘイ)の違い
この刺身サラダ料理のことを鱼生(Yusheng/ユーシェン)と呼びます。
この料理を食べる際は、大勢で御箸を持ち上に突き上げながら、自身の願望・好きな事を叫びながら、刺身サラダを上高く突き上げます。
鱼生をできるだけ高く突き上げ、バラバラにすればするほど良いとされていますが、この上高く突き上げる事を、広東語で捞起(Lohei/ローヘイ)と言います。
つまり、鱼生は刺身サラダ(名詞)のことであり、捞起は高く突き上げる行為(動詞)です。
もはや鱼生と捞起は「刺身サラダ食べて高く突き上げる行事」という使い方をしているローカル媒体も見かけます。
なので、好きなように使えば良いのですが、以下の例は明らかに違和感があります。
- ×ローヘイを食べた⇒〇魚生を食べた
- ×ローヘイを買った⇒〇魚生を買った
- ×ローヘイを用意した⇒〇魚生を用意した
- ×魚生(ローヘイ)⇒魚生(ユーシェン)
ローカル媒体では、捞起鱼生と書いている媒体もありました。しっくりくる使い方だな、と思いました。
鱼生(ユーシェン)と捞起(ローヘイ)の起源
実は大陸本土の中国人の大半は、鱼生を知りません。
鱼生は、東南アジアの華僑によって親しまれているので、シンガポールに来たばかりの中国人は、出身地域にも寄りますが、「こんな旧新年の祝い方はじめて知った」と思う人が大半です。
しかし歴史的には昔からある料理との見解も。以下は、ネットを参考にしたポイント要約です。
中国で、生魚の切り身料理(以降は魚生と表記)について最古の文献は、周(紀元前1046年~紀元前256年)の時代にまで遡ります。
漢(紀元前206年〜220年)時代も、曹植(三国志の魏国・曹操の5男)をはじめとする中国の学者が、魚生を賞賛する詩まで書くほど人気でした。
しかし元(1271年〜1368年)以降は、衛生上の観点から人気は下火となり、清末期には殆ど姿を消し、魚生を食べる文化は広州・潮州の南部に限られるようになりました。
広州や潮州の南部は、福建と同じく、中華系シンガポール人のルーツですよね。
鱼生は元時代から下火になり清時代で消滅したが、細々と食べ続けていた一部地域(広州や潮州の南部)の人々が、シンガポールやマレーシアに南下してきた。
そう考えれば、鱼生は現在の中国人には余り知られてないことも納得できます。
シンガポールでは19世紀頃、広州・潮州からの移住者により、鱼生を食べる風習が広められたそうです。
日本語媒体でローヘイが独り歩きする理由
シンガポールの街中では、旧正月に食べる生魚の切り身料理のパッケージには「鱼生」と明記されていることが多いです。
なので自分は昔から、この料理は鱼生だと認識してたのですが、日本語媒体・SNSではローヘイと記述されることが大半で、なんとも言えない気持ち悪さを感じていました。
おそらく中国語(普通語)での鱼生(Yusheng)が、日本人には非常に難しい発音である一方、捞起(Lohei)は、ほぼカタカナ発音と一致し簡単なため、シンガポール在住日本人間で口頭でローヘイが広まったのではないか、と考えています。
そしてローヘイと認識する日本人が、ブログ・SNS等でローヘイと書いて拡散し、更に日本人間でローヘイが独り歩きした結果、ローヘイの名詞的用法が多発しているのが現在です。
鱼生の中国語発音はYushengですが、Yeesang(中国南部系発音が影響?)とも呼ばれ、「イーサン」とカタカナ発音しても、恐らくシンガポールでは通じます。
なので刺身サラダ(名詞)を言及する際は、必ず鱼生(イーサン)と言及し、しっかりした使い分けをすることを、オススメします。
そうすることが、現地文化を尊重することに繋がるのではないかな、と思います。